1. アジアの概況
現在、アジアの主要輸出地ではコンテナの供給に制限がかかった状況が続いています。主要港における港湾混雑に起因するスケジュール遅延などが要因となっています。国慶節を過ぎ、本来であれば荷動きが落ち着く 10 月後半から11 月前半にかけて、今年は需給が急速に強まったことにより、欧米からコンテナを回送して在庫を確保することができませんでした。また、乗組員の感染発覚により輸送スケジュールの大幅な変更を余儀なくされるケースも生じています。 コンテナヤードが満杯状態になっているものの、ヤードからコンテナを出すための鉄道や貨車、トラックが不足し、搬出先となるコンテナデポや倉庫もフル稼働状態となっているため、それぞれの事業者にとって身動きが取れない状態とな っています。
2. 各地における物流への影響
【日本】 日本発コンテナ運賃は北米航路など長距離航路で高騰していましたが、アジア向けにも影響が生じています。主要航 路でのコンテナ不足により、運賃水準が高い欧米諸国向けにコンテナ回送が優先され、短・中距離のアジア向けにコンテナが回ってこないことなどが影響しています。東南アジアでは特にベトナム、マレーシア、シンガポール向けの需給が 逼迫しています。また、北米航路におけるスペースやコンテナ機器の不足が徐々に顕在化し、急増するコンテナ貨物に西岸諸港や鉄道への積替作業が追い付かず、北米内陸部にコンテナが滞留したことも、日本のコンテナ不足に拍車を掛けています。
【米国】 ロサンゼルス港とロングビーチ港では、6月以降80~85%の稼働率で貨物が取り扱われており、港湾作業者やシャーシ不足により混雑が生じています。現在では、ピーク時に40隻の貨物船が沖待ちとなるなど、輸送に遅延が生じています。一方、貨物取扱量は昨年対比で22%増加しており、作業者不足や本船遅延による混雑は2021年も継続して生じる見込みです。
【中国】 中国では海外から輸入された肉類や魚介類から新型コロナウイルスが検出されたとして、検査体制を強化しています。 天津港では複数名の港湾作業者がコロナウイルスに感染していることが判明したため、11 月 8 日以降、関係する全作業員が PCR 検査を行っています。また、輸入冷凍冷蔵貨物は全て消毒しなければならなくなったため、輸入通関手続きに遅延が生じており、20日時点で、冷凍冷蔵貨物の引き取りに約 15 日遅れが生じています。ヤードではリーファープラグ不足の深刻化や、寄港スケジュールの遅延など影響が広がっており、天津を避けて近隣の青島・大連での荷降 ろしや釜山港で貨物を一時保管する対応が検討されています。
【シンガポール】
輸送量の急増でコンテナヤードが逼迫し、入港まで 4~5 日の沖待ちが発生しています。また、ロングホールの直航本船にスペースがないため、代替でシンガポール経由のトランシップも増えています。
スペース不足が深刻となっており、レムチャバン出しのコンテナ手配が厳しくなっています。 空コンテナ不足も顕著となっているため、直航ではなく、シンガポールや香港を経由し輸送するケースも増えています。
【ベトナム】
空コンテナ不足により、ホーチミン・カットライ、カイメップの両港で平均 3~4 日の本船遅れが生じています。
【ミャンマー】 ミャンマーでは、空コンテナの不足が深刻化し、一部の農産品の輸出が滞る事態が生じています。 また、空コンテナが不足し、コンテナの調達価格は通常の2~3倍に高騰しています。
【英国】 英国のフェリクストウやサウサンプトン、ロンドンゲートウエーでは今年夏ごろから港湾の混雑が始まり、現在も英国向けのコンテナ船のブッキング停止や抜港などの対応が行われています。新型コロナウイルスの感染拡大で港湾作業者 が減少し、コンテナの搬出入作業などが追い付かないことが原因となっています。貨物によっては 3 週間近くの遅れが 生じていますが、混雑解消のめどは立っておらず、この状況は年明けまで続く見込みです。また英国向けの貨物を大陸側の港湾で荷揚げし、そのままトラックを使って輸送するケースも出ています。
【ニュージーランド】 オークランド港では、荷卸待ちのため沖待ち中のコンテナ船による渋滞が深刻化し、小売業界は輸入商品の到着が遅 れています。新型コロナウイルス感染症を受けた国境閉鎖に加え、港のオートメーション化計画がロックダウンにより中 断したこと、ロックダウン解除にともない小売業者からの注文が殺到していることがあげられます。