エジプトのスエズ運河庁は9月17日に、 2023年初から、ばら積み貨物船とクルー ズ船を除く、全ての船舶の運河通行料を 15%値上げすると発表した。
スエズ運河庁は、通行料に関する方針を 以下のとおり示しており、今回の値上げに ついて、オサマ・ラビー長官は、船舶会社 の収益力(運賃)向上が最大の理由と説明 した。コンテナ船、原油タンカーなどの用 船料が上昇し、世界的に海運各社の業績が 好調であることに触れた。また、原油価格 の高値基調が続く中、他の代替ルートと比 べて、スエズ運河を通る場合の効率性を強 調した。
エジプトでは外貨準備高が減少する中、 同国政府にとって、外貨収入源の1つであ るスエズ運河通行料の重要性は増している。 輸入規制など(2022年6月24日記事参 照)によって貿易赤字は縮小し、2022年8 月の外貨準備高は331億ドルとようやく下 げ止まったが、エジプト経済界を代表する 産業連盟(FEI)は「輸入規制により日々 数百万ドルの損失が出ている」として規制 緩和を求めている。
また、輸入品価格上昇を一端とするイン フレの発生により、生活が悪化する国民か らも、経済見通しの説明を求める圧力が高 まり、政府は9月に国民向け政策対話を開 催する予定にしている。経済安定化に向け た追加融資パッケージについて、IMFとの 条件交渉が難航する中、ラビー長官がメ ディアで言及した「(スエズ運河通行料の 値上げによる)7億ドルの収入増」は貴重 な自主財源となる。
【通行料に関する方針】(スエズ運河庁 ウェブサイトより一部抜粋)
通過船舶の収益力を考慮する。 スエズ運河を通るルートと他の代替ルート の船舶コストを比較する。 運河収入を増加させる手段として、潜在的 な受益者の数を増やす。 通過船によって達成された節約の一部を共 有する。 市場条件と経済的変化を十分に考慮する。 船舶の種類と規模、積載条件、貨物の種類 を考慮する。