海外の海事メディアは、EVの今後の普及 拡大に伴う自動車専用船やRo/Ro船による 輸送時のリチウムイオン電池に由来する火 災事故の増加に対する懸念を伝えている。
リチウムイオン電池輸送の危険性は既に 航空貨物、コンテナ船業界では広く認知さ れており、特にコンテナ船では”X-Press Pearl”、”Maersk Honam”などの大規模火 災事故の原因として強く疑われているが、 今後Ro/Ro船などでの火災事故への備えが 必要だという専門家の声を紹介している。 昨年大西洋で火災事故の末に沈没した “Felicity Ace”も、EVが搭載していたリチ ウムイオン電池が火元になったと疑われて おり、貨物事故通知システム(CINS)は すでにコンテナ船におけるリチウムイオン 電池の安全な輸送についての議論を始めて いるが、CINSの関係者は今後、EVの海上 輸送が一層増加するにつれてRo/Ro船など での火災事故への対策強化の必要性を訴え ている。
リチウムイオン電池による事故は、電池 が損傷した際に瞬時に800度近い高温が発 生し周辺の可燃物から発火することで発生 していると見られ、周辺の正常な電池も高 温にさらされることで熱暴走を起こし新た な火災の火種になり大規模な火災を引き起 こすとされ、火災の拡大を防ぐためには大 量の水により冷却する必要があり、泡材や 二酸化炭素による消火では火が押さえられ ない懸念もある。
EV輸送では、新車の輸送における電池本 体は厳重に保護されており、火災発生のリ スクは低いとの認識が広まっているが、今 後中古EVのRo/Ro船による輸送では火災リ スクが高まると指摘している。
コンテナ船や自動車専用船は比較的、貨 物特性に対応した一括した安全対策が取り やすいと見られている一方、コンテナや車 両など様々な貨物をばらばらに混載して運 用されることが多いRo/Ro船では特別な対 応がとりにくく、関係者は、今後荷主によ るより適切な申告と新たな安全対策ガイド ラインの策定が必要だとしている。