ボルチック海運取引所(英国)は5日に発表したレポートで、2025年は世界の運業界にとり、地政学的緊張、貿易の混乱、変化する市場動向による大きな不確実性を伴い困難な年を迎えることになると分析している。
レポートは、地政学が海運業界に与える影響力の大きさを強調し、「戦争や政治的緊張が貿易パターンを変化させ、保護主義的な行動が新たな非効率を引き起こす可能性があると指摘、中心的な課題は「コンテナ輸送にとって極めて重要」な紅海/スエズ航路の再開に関わるもので、喜望峰経由の迂回航路は、当初は一時的な措置と認識されていたが、いまや事実上の新常態となり、コンテナ船隊の輸送能力のかなりの部分を吸収し、グローバルサプライチェーン全体に連鎖的な遅れを生じさせているとしている。
アジアから欧州への輸送にかかる10~14日間と3,500海里の追加輸送は、コンテナ船隊の輸送能力の約10%を吸収し、港湾に連鎖的な遅れをもたらし続けており、輸送時間の延長は、特にコンテナ部門の運賃を上昇させ、短期的な景気浮揚をもたらしたがその結果、輸送コストが上昇し、排出量も急増したという。
コンテナ船社の2024年業績は、暗澹たるものから一転して、多くの船社にとって過去3番目の好業績となったが、この一時的な猶予は弱く、紅海航路の再開は、小型ばら積み船とタンカーが先導し、その後、超大型コンテナ船が徐々に復帰する「漸進的なプロセス」になると予測、この移行期間には、港の混雑や出港の空白など、「混乱」が生じると予測している。
紅海での当面の混乱にとどまらず、この業界には保護主義の脅威が大きく立ちはだかっており、特に米国による中国からの輸入品に対する関税の復活は、出荷前倒しを引き起こし、企業はサプライチェーンの再構築を余儀なくされている。
また、COSCOのような中国船社や、多数の中国建造船を使用する船社にとって、米国での追加料金が発生する可能性は、さらにコストを増加させると指摘している。
これらの貿易変化に対応し企業は、より高い関税を回避するために新たなパートナーを求め始めており、これにより、より多くの陸上輸送とフィーダーや近海船などの小型船に対する需要が高くなり、さらに、サプライチェーンが延長、より小型船がネットワークにますます関与、より大きな多様化への動きを示しているという。
25年の海運業は不確実性に満ちた年 スエズ経由再開は漸進的プロセスに