米国西海岸の港湾で太平洋海事協会 (PMA)と国際港湾倉庫労働者組合 (ILWU)の労働協約の失効が7月1日に迫 る中、PMAとILWUが7月以降も交渉を継続するという共同声明を発表した、と複数のメディアが報じている。共同声明では、 PMAとILWUのいずれの当事者も「ストライキやロックアウトの準備はしていない」 と述べており、当面、混乱は回避される見通しだ。
2000年以降の労使交渉の経過をみると、 例えば2014年の交渉では協約失効後1年以 上にわたって交渉が継続して行われるなど 、協約失効前に合意に至った例はない。また、過去には労使交渉が難航し、荷役業務の遅れによ り米国経済に1日当たり20億ドルともいわ れる巨額な損失が生じ、時の政権が介入したこともある。
今回の労使交渉は2022年5月10日から開始され、世界的な物流混乱が長期化し、 バイデン政権が関心を示していることから、 早期妥結が図られるという楽観的な見方もあったが、妥結が7月以降になる見込みとの見方がこれまでも伝えられるなど、実際には厳しい交渉が続いているとみられる。交渉がもつれ、サボタージュやストライキ、 ロックアウトなどで荷役業務の遅れが生じる懸念もあったが、今回の報道から、労使双方とも自制をもって交渉していることがうかがえる。
労使交渉に関係する最近の動きとして、 バイデン大統領は、港湾・サプライチェー ン担当の新たな特使として、元陸軍大将で 米国輸送軍司令官のスティーブン・ライオ ンズ氏を任命したほか、6月10日にロサンゼルス港を訪問し、インフレーションやサプライチェーンなどの課題についてスピーチを行っている。また、 米国の小売業界団体が、バイデン政権によ る西海岸港湾の労使交渉への関与を2022 年3月に続いてあらためて要請している