カナダ大手鉄道会社操業停止による物流への影響

各種ニュース報道のとおり、現地時間 8 月 22 日(木)午前 0 時 01 分にカナダの主要鉄道 2 社が労使交渉の決裂

を受け従業員のロックアウトを実施しました。同日午後にはカナダ政府も介入し封鎖は解除されましたが、正常化

には1週間以上かかる見込みです。本号では操業停止の混乱による物流への影響についてご連絡いたします。

 

1. カナダ経済における鉄道輸送の役割

カナダは貿易依存度が高く、また貿易相手国は輸出入とも米国がトップで、米国への輸出の多くは鉄道輸送によって行われており、今回ロックアウトを実施したカナディアン・ナショナル鉄道(以下、CN)とカナディアン・パシフィック鉄道カンザスシティー(以下、CPKC)の 2 社が扱う貨物の約30%は国境を越え米国に輸送されています。

2.操業停止による物流への影響

CN は、カナダ東海岸と西海岸、米国中西部とメキシコ湾に約 2 万マイルの鉄道ネットワークと関連輸送サービスを保有し、北米全域で毎年 3 億トン以上の天然資源や製造製品などを輸送しています。また、CPKC は約 2 万人の鉄道員を雇用し、カナダ、米国、メキシコを結ぶ約 2 万マイルの鉄道ネットワークをバックに北米大陸の主要市場に鉄道サービスを提供しています。2023 年末で期限切れとなった労働協約の再締結に向け、かねてより CN 及び CPKC とカナダ最大のサプライチェーン労働組合であるチームスターズ・カナダ・レイル・コンファレンス(以下、TCRC)は、数カ月にわたり交渉を続けてきましたが妥結に至らず、鉄道会社側は「物流ピークを迎える秋に組合がストライキを起こすより影響範囲が少ない」として、8 月 22 日(木)に組合職員のロックアウトによる操業停止に踏み切りました。同日中に政府の介入によりロックアウトは解除され、CN は 23 日(金)に操業再開したと発表しています。CPKC についても、一時組合がストライキ断行するも、マッキノン労相の命令を受け、26 日(月)にカナダでの鉄道運行を再開しています。

TCRC はいったん労相の命令に従うものの、連邦裁判所に不服申し立てを行う予定であり、今後の動きにも注視する必要があります。また、鉄道操業停止自体は 24 時間以内であったものの、CN・CPKC はロックアウト前より 1 週間ほど出荷を留めており、サプライチェーンにも影響が出ています。産業界からは鉄道輸送停止により1日当たり10億カナダドル(7億3300万米ドル)の損害が発生するとの試算も出されています。また、鉄道網が完全に回復するには最低1週間、サプライチェーンが安定するまでにはそれ以上の期間を要すると予想しています。